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神里雄大/岡崎藝術座が岸田戯曲賞受賞作を東京初演(ぴあ)

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出典元: 神里雄大/岡崎藝術座『バルパライソの長い坂をくだる話』初演舞台(2017年)より 撮影:井上嘉和

第62回岸田國士戯曲賞を受賞した神里雄大/岡崎藝術座『バルパライソの長い坂をくだる話』がゲーテ・インスティトゥート東京 東京ドイツ文化センターで本日8月21日より上演される。2017年11月、KYOTO EXPERIMENTの初演以来約2年ぶりの再演となり、東京では初の上演だ。

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神里自身が文化庁新進芸術家海外研修制度研修員としてアルゼンチンに11カ月滞在し、南米各地を訪ねたなかで出会った3人のアルゼンチン俳優、ダンサー、そして日系移民をルーツに持つブラジルのダンサーの4人が、スペイン語で物語を紡いでいく。観客は日本語もしくは英語の字幕でその意味を追う。

神里は再演に向け、ブエノスアイレスに滞在し稽古を重ねている。神里は言う。

「今回、ブエノスアイレスの演劇人に稽古を公開したんですが、役者たちは初めて自分の言葉が理解できる人に向けて演じたので、緊張もしたしモチベーションも上がっているみたいです」

家族の遺灰を海に撒きに来た人、太平洋を越えた昔の人、沖縄で戦没者の骨を発掘する人……。神里が集めたさまざまな物語を日本語で立ち上げ、スペイン語に訳して上演した。

「もともとスペイン語に翻訳される前提でつくった作品です。日本語の状態ではこの戯曲は、文字で読んだほうがわかりやすいかもしれない。けれどスペイン語で上演された場合、おそらくは観た方がわかるものになっているんじゃないか、と思うんです」

神里はペルーで生まれたものの、スペイン語のネイティブではない。だから、役者たちの演技に対して細やかな演出をつけることは容易ではない。

「ニュアンスとか間の取り方とか、日本語ならある程度伝えられることも、わからない。それに役者たちも、“こうしてほしい”と言っても彼らが納得しないことはやらないんですよ。だから、コントロールするのではなく、細かいことは役者に委ねているんです」

けれどもその、一見ままならない状況こそが、いま神里自身が目指す演出家としての居方につながっているのだという。

「最近とくに、演出家があまり前に出ない方がいいのかもしれないと思っていて。今までは細かな演出をつけることによって、実際に演じる人間の意見をないがしろにしていたのかもしれないという気持ちがあります。道は作るし、“こういう方向に向かっていくんですよ”という話はいくらでもするけれど、運転をするのはあくまでも役者。“ここでスピードを緩める”とか“左車線に寄る”とかは彼らに任せるべきだと、今作を通じて思ったんです」

南米を舞台にした、実際に見聞きしたことをステージに乗せて紡ぐ演劇。題材も役者の選び方も上演のかたちも、いまの日本の演劇界には似たものがほぼ見つからない、独自の道を歩んでいる。

「興味のあることをやろうと思ったら、僕にとって身近だったのが南米だった。僕にとっては近いし、行きやすい場所だった。スペイン語にも興味があったし。それを東京や日本の、自分の身の回りだけを見ていたら確かに誰もやっていない。僕のやっていることや扱う題材がどこまで興味を持たれているのだろうとしんどい気持ちになることもあります。でも、日本の外を見てみたら決して僕のやっていることは珍しくもないし、真新しくもない。移民のことや“慣れ親しんでいる場所ではないところに人が行って、そこで何かが起こる”みたいなことって、いっぱいやられていることなんですよ。だからこれからも、僕は僕が興味のあることをやっていけばいいのかなあ、と思っています」

取材・文:釣木文恵






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