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今年も大ヒット中! 辻村深月と八鍬新之介が語る『映画ドラえもん』最新作(ぴあ映画生活)




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出典元: 八鍬新之介監督、辻村深月

毎春恒例の人気シリーズ最新作『映画ドラえもん のび太の月面探査記』が公開され、子どもたちだけでなく、大人の観客からも高い評価を集めている。本作は入念に作りこまれたプロットや、ダイナミックな画づくりを評価する声が多いが、脚本の辻村深月と監督の八鍬新之介は、映画を愛した原作者の藤子・F・不二雄の“想い”を継いで、創作にあたったようだ。

辻村は幼少期から藤子作品の大ファンで、『ドラえもん』のひみつ道具を章のタイトルにつけた作品(『凍りのくじら』)も発表しているが、かつて映画ドラえもんの脚本依頼を断ったことがあるという。「“一生ファンでいたいから”という理由でお断りしたのですが、その翌年の映画が八鍬監督の『映画ドラえもん 新・のび太の大魔境 ~ペコと5人の探検隊~』だったんです。それが本当に素晴らしくて、“この監督とならばやってみたい”と思うようになりました。それに藤子プロさんが今までに映画を作ってきたスタッフの方たちと会わせてくださる機会をたくさん設けてくださって、毎年のドラえもん映画は当たり前にあるものではなくて、今年もどうにか来年につなげようという、いろんな人たちの思いが積み重なった39年の歴史なのだと感じました。 脚本の依頼は、“そのバトンを受け取って走ってもらえないですか?”ということなんだ、と思えるようになり、『八鍬監督とご一緒にできるタイミングであれば』と私の方からお伝えしました」

八鍬監督はこれまでに『新・のび太の大魔境』『新・のび太の日本誕生』を監督し、TVシリーズの『ドラえもん』も担当しているが「辻村さんの作品は読んでいましたので“この方の脚本であれば、間違いなく良い作品になる”とわかっていた」と振り返る。「辻村さんの作品は、伏線を巧妙にはって最後に回収するミステリーの構成に近いものがあって、起承転結の“転”の部分がちゃんとある。それにドラマがちゃんとあるんですね。すごい巧妙なギミックがあっても感動できるかどうかは別だと思うんですけど、辻村さんはその両方が共存している作品をたくさん書かれているので、この方が書くドラえもん映画はきっといいものになると思っていました」

しかし当初、脚本づくりは試行錯誤の連続だったようだ。「冒険の場所を決めるところからスタートして、子供たちが身近に知っている場所に行きたかったんです。ドラえもんたちがこれまであらゆる場所に冒険に行っている中で、奇跡的に“月”が手つかずでした。だけど、月って現実に行こうと思うと遠いけど、物語上の嘘を吐くには観測がもうだいぶ進んでいる。“月に行ったら王国がありました”というのはできないんです。現実に即したSFを描くのが藤子先生の流儀だと思いますので、最初の打ち合わせは八鍬さんが月の資料をもってきてくださって“もし、月に生命が存在するとしたら、どんな可能性が考えられるか?”ってところから考えることになって『これは大変な場所に手を出してしまった』と(笑)」(辻村)

そんなある日、八鍬監督がコミック23巻に登場するひみつ道具“異説クラブメンバーズバッジ”を登場させることを思いつく。バッジをつけたメンバーには、私たちの社会に広く蔓延している“定説”ではない“異説”が現実になるひみつ道具だ。「何かないかな? とコミックを順番に読んでいって見つけたんです。コミックは地底に行く話なんですけど、月に行くコマがひとつだけあって“このコマを膨らませればいいんじゃないかな”って。いきなり高度な文明をポンと出現させたところで、“ああそうですか”ってなってしまうので、星を作っていく過程を踏むのはすごくドラえもんらしいし、重要だなと思いました」(八鍬監督)

この道具の登場で脚本づくりは一気に加速した。物語の冒頭、“月にはウサギが暮らしている”と信じるのび太はみんなにバカにされ、異説クラブメンバーズバッジをつけて月の世界に旅立つ。バッジをつけたドラえもん&のび太は、月にウサギ王国をつくり始める。一方、のび太たちの学校にやってきた不思議な転校生・ルカにはある“秘密”があり、これらのドラマが見事に融合していく。「異説クラブメンバーズバッジがそもそもちょっとマニアックなひみつ道具だと思うんですね。存在がマイナーということではなくて、理解するのにワンクッションを必要とするというか。でも、それが原作に使われていることにグッとくるんです。さらにその難しい道具の説明を藤子先生が原作の数ページのマンガの中で見事にしてくださっている。この道具を藤子先生からお借りしてつくる以上は、道具の力を使って、私に求められているであろう最大限の伏線と回収をやりたいと思ったんです」(辻村)

さらに辻村は巧みな構成で魅せるストーリーだけでなく、劇中の“セリフ”にも力を注いでいる。本作の登場人物のセリフは、過去の辻村作品のセリフとは異なり、藤子・F・不二雄が書いてきた言葉づかいそのままで、辻村が書き下ろした『小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記』は目で文字を追っているだけで、ドラえもんやのび太の声が聞こえてくるようだ。「最初は“自分がこのセリフを書いていいのかな?”という気持ちが大きかったんです。でも、実際に書き始めると、自分の中に『ドラえもん』の記憶がインストールされているので、自分がこれまでに見てきたドラえもんの喋り方、動き方をキャラクターたちがしてくれて、すんなり書くことができました。ただ、私は初期の『ドラえもん』が大好きすぎて、最初の脚本ではドラえもんの言葉づかいが、やや乱暴(笑)。そこだけは微調整しました」(辻村)。「僕がいちばんすごいと思ったのは、映画に出てくるウサギ怪獣が“ムガビ”っていうんですけど、このセリフは藤子先生の漫画に出てきそうなんですよね(笑)。だから脚本を読んでいても“このセリフは違うな”ってものはまったくなかったですね」(八鍬監督)

本作はこれまで以上に入念に作りこまれたプロット、奥行きを生かした構図で描かれるアニメーション、主要キャラクター全員を“主役級”に扱って描かれるドラマなど、密度の高い“これぞ映画ドラえもん!”と言いたくなる作品になった。

「八鍬さんに話を聞いているときに『自分は原作を守るとか壊すではなくて、ただただ“面白い映画”を突き詰めていったら、ああいう風になった』っておっしゃっていて、面白い映画を突き詰めていった藤子先生の気持ちと、八鍬さんの気持ちが共鳴した結果なんだと思ったら、私も今回は藤子先生が描かれたような大きいスケールの話に挑んでみたいと思ったんです」(辻村)。

「自分が映画をつくる時の基準はどこにあるかというと、お会いしたことはないですけど、藤子先生がもし映画を観たとしたら、藤子先生を満足させたいって感じなんです。あの方は大人と子供が共存しているので、想像力を失っていない大人が観て面白いと思ってもらいたい。だから、この映画を観て『そうきたか』とか『この展開は読めなかったな』と思ってもらえるようだったら、この映画は成功かなと思いますね」(八鍬監督)

『映画ドラえもん のび太の月面探査記』
公開中



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