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『グリーンブック』監督が解説。正反対のふたりが“親友”になった理由(ぴあ映画生活)




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出典元: ピーター・ファレリー監督

第91回アカデミー賞で作品賞、脚本賞、助演男優賞に輝いた『グリーンブック』が日本でも大ヒットを記録している。先ごろ来日し、記者会見に出席したピーター・ファレリー監督は受賞について「今までコメディばかり撮ってきたので賞に絡む経験がなかった」と語ったが、本作は彼の過去のコメディ作品と同じ視点、同じ人間観で描かれている。彼が「すごく自然なこと」と語る信念について話を聞いた。

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ピーター・ファレリー監督は弟のボビーとコンビを組んで、1994年に『ジム・キャリーはMr.ダマー』でデビューし、その後も強烈な下ネタやギャグが満載のコメディ映画を次々にヒットさせてきた。しかし、彼の新作『グリーンブック』は実話を基にした作品だ。

映画の主人公はふたりの男。ひとりはナイトクラブで用心棒をしているイタリア系のガサツなオッサン、トニー・“リップ”・バレロンガ。そしてもうひとりは、天才的なピアニストとして知られるアフリカ系の洗練されたオッサン、ドクター・ドナルド・シャーリーだ。金に困ったトニーは、人種差別が強く残る南部に演奏旅行に出かけるドクターの運転手を務めることになり、正反対のふたりは同じ車に乗り込む。

本作はトニーとドクターの道中が描かれるが、ポイントは彼らが第三者から強制されることなく、自分から変化し、相手への理解を深めていくことだ。「お互いに話すことも大事だけど、このふたりは“相手の立場に立ってみる”ことが自然にできるから、自分から変化していけるんだと思う」とファレリー監督は分析する。今も昔も、悲しいことに偏見や差別はあり、多くの人が“あなたが変化しろ!”と声をあげる。しかし、本作はトニーとドクターがそれぞれ“自分から”変化していく様が描かれる。

「トニーは映画の冒頭で1962年のアメリカ北部で暮らす人独特の人種差別的な部分を持っているんだけど、南部に旅行してそこで広がっている構造的な人種差別を許容できないと思うんだ。同時にドクターのことが人として好きになって共感するようになっていく。一方のドクターも旅の最初はトニーのことを“マッチョな用心棒”ぐらいにしか考えていないんだけど、旅を続ける中で相手の立場に立つようになると、彼が多面的な人間だと知るようになるんだ。トニーは彼と契約した以上は友人からギャラのいい仕事をオファーされても約束を守るし、ドクターが同性愛者だとわかっても、それをすんなり受け入れる。物語の舞台が1962年だと考えると驚くかもしれないけど、トニーはナイトクラブで仕事をしていて、そういう場面をよく見ていたと考えれば、そこまで不思議なことじゃない。そうやってお互いに“相手の立場に立って”、お互いのことを知っていくんだ」

相手よりもまず自分が変化する。言うはやさしいが簡単なことではない。そこでファレリー監督は彼らが少しずつ変化していくよう脚本を構成していった。「誰だって先入観は持ってしまうものだ。でも、しばらく一緒にいると相手にはいろんな面があるんだなって気づいていくわけだから、少しずつ相手の多面性に気づいていくように脚本を書いたよ。挑戦だったのは、映画の冒頭でトニーの差別主義者的な面を描かないといけないけど、観客には彼のことを好きになって応援してもらいたかった。そこが難しかったね」

トニーとドクターは同じ車で移動し、一緒に食事をして、ラジオを聞いて、演奏旅行を続ける。その中では様々なトラブルが起こるが、ファレリー監督は「人間の一番弱くて、キレイじゃない部分を見ても相手を好きになれる関係が理想だと思う」と力を込める。「例えば、『メリーに首ったけ』の主人公は、知的障がいをもった子がイジメに遭っているのを守ろうとするし、マット・ディロン演じる探偵からメリーがどんなにヒドいやつなのか散々聞かされても、メリーのことを好きでいる。(メリーを演じた)キャメロン・ディアスみたいな娘と恋に落ちるのは誰にだってできる。でも、人間の一番弱くて、キレイじゃない部分を見ても相手を好きになれる関係が理想だと思うんだ」

ファレリー監督の想いは彼自身、そして彼が手がけるコメディ映画のすべてに貫かれている。「マーティン・ルーサー・キング牧師が“肌の色ではなく、内にあるものや個性で、その人を見よう”と言ったけど、僕もその通りだと思うし、それこそが常識だと思う。親からもそう言われて育ってきたしね。でも、それが現実ではなかなか実現できていないんだ。僕がこの物語で好きなのは、主人公ふたりがこの言葉の通りに行動すること。彼らは最初は先入観を持っていたりするけど、時間が経つにつれて、相手がどんな人物なのかをちゃんと見て、お互いに“お前、いいやつじゃん!”と思った時に友情が生まれる。それはすごく自然なことだと僕は思うんだ。僕はそういう部分を持ったキャラクターを応援したいと思うし、そいつが“負け犬”系だったりしたら、さらに応援したくなるんだよ!」

この映画を観た人の多くがトニーとドクターのことを応援したくなるだろう。そして映画が終わった時、あなたは“自分から”変化したいと思えるだろうか?

『グリーンブック』
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